関　連　情　報

2011.12.7 on sale!

モーツァルト

ヴァイオリン協奏曲

第３・４・５番

MOZART Violin Concertos

ヴァイオリン ： 島根　恵
ピアノ ： 碓井　俊樹

ヴァイオリン使用楽器
Marcello Ive Guarneri del Gesu model 2003

　コジマ録音 / ALCD-9111

　　\2,800(税抜)

ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルト
Wolfgang Amadeus Mozart

ヴァイオリン協奏曲 第3番 ト長調 KV216
Cadenza:Sam Franko
Violin Concerto No.3 in G major KV216
[1] Allegro
[2] Adagio
[3] Rondeau. Allegro

ヴァイオリン協奏曲 第4番 ニ長調 KV218
Cadenza:Joseph Joachim
Violin Concerto No.4 in D major KV218
[4] Allegro
[5] Andante cantabile
[6] Rondeau. Andante grazioso - Allegro ma non troppo

ヴァイオリン協奏曲 第5番 イ長調 《トルコ風》 KV219
Cadenza:Joseph Joachim
Violin Concerto No.5 in A major "Turkish" KV219
[7] Allegro aperto
[8] Adagio
[9] Rondeau. Tempo di Menuetto - Allegro

島根さんのピアノ伴奏によるモーツァルト３大協奏曲が颯爽と登場した。
その出来映えは、モーツァルトらしい軽快なテンポで鮮やかに仕上がっている。
特に、作曲者の原譜のアーティキュレーション（スラー等）を忠実に再現していることも素晴らしい。
聴いていると、まさにモーツァルトが曲を書いている時の発想心理が蘇ってくるようだ。
最近、この3曲は様々なオーディションやコンクール、発表会などにピアノ伴奏で演奏される機会が多くなってきている。
若いヴァイオリンを学ぶ人々にとって、最高のお手本となるであろう。

ヴァイオリニスト　　　　　　
桐朋学園大学特任教授
　　　　　
東京音楽大学客員教授

海野　義雄

レコード芸術 2012年1月号 『新譜月評』より

ヴァイオリンと管弦楽のための作品、それも協奏曲として書かれたものを、あえてヴァイオリンとピアノによって奏する−以前にもこの形のディスクを世に問うていた島根恵だが、今回はそれがポピュラーな名曲のモーツァルトの協奏曲第３、４、５番なので、いきおい注目度も高くなろう。この行いはけっして便宜上致し方なくそうするわけではなく、もっと積極的な意味付けを踏まえている。すなわち、同じ弦の波の中に独奏ヴァイオリンが紛れかねないオーケストラ共演とは違って、ピアノ伴奏ならばヴァイオリンの細部までがより判然と聴き取れる利点が、確かにあるという主張なのである。これは少なくとも一利あることだし、このCDの場合には、研究熱心なヴァイオリニストの島根恵が、モーツァルトの自筆譜などもつぶさに当たり、スラーほかのアーティキュレーションにも正統性を求めた結果の所産ということなので、試みは必然性を強める。アーティキュレーションに限らず、これまでのCDからも知られた島根の美しい音、確かな指さばき、弓さばきによる歌いくちが、たいへん快い効果を挙げている事実は否みようもあるまい。各曲で用いられたカデンツァは、第3番がサム・フランコ作、第４、５番はヨゼフ・ヨアヒムによるもの。それらも含め、これらはぜひ一聴をお推めしたいと思うほど美しく、奥行きのあるヴァイオリンのCDである。少なくとも、「協奏曲をピアノでなんて」という頭ごなしは避けられたい。

濱田滋郎

2011年の2月号で島根恵の『宮殿のサロンコンサート』をご紹介した。ロード、アッコーライなど、学習には欠かせないが優れた演奏で聴く機会の少ない曲を取り上げていた。また、ピアノ伴奏であることにも意義がある。通常、学習者はピアノ伴奏で演奏するからだ。これはいわばその続編。モーツァルトの第３〜5番の協奏曲を収録。
　島根はモーツァルトの音楽コンクールの優勝歴があり、碓井はザルツブルクのモーツァルテウムに学んでいることもあって、二人にとってモーツァルトは特別な存在なのだろう。実際どれも奏楽の喜びに満ちていて、音楽的にも健康的。ザルツブルク時代のモーツァルトの明るく爛漫な音楽がはじけている。特筆すべきは、運弓が軽やかで音の出る瞬間やスラーなどのアーティキュレーションに神経が行き渡っていることで、それが音楽に多様な表情を与えているのだ。島根自身の解題によれば、録音にあたって自分の楽器のひとつにガット弦を張り、クラシック弓で弾いてみて得ることが多かったという。ヴィブラートも控えめ。ピアノも軽いタッチでヴァイオリンのコンセプトに合っている。（中略）このディスクでガット弦など歴史的な情報を取り入れた演奏への理解が増すといいし、前作同様、模範演奏以上の成果を挙げている。

那須田務

[録音評]非常にのびやかで溌剌とした響きを展開している。2011年7月、稲城市立iプラザでのセッション収録で、距離的にはやや近い印象もあるが、そのぶんだけ解像力の高さにつながり、ピアノとの距離感もバランス的にごく自然にまとめられている。響き感は多いわけではないが、不要な低域を抑え込むことで明るさ、輝かしさなどが活かされている。<93>

石田善之

「優秀録音」より
　優秀盤のひとつは島根恵のモーツァルトで、整ったバランス感覚を大いに評価した。

石田善之

ぶらあぼ 2012年1月号 『新譜ぴっくあっぷ』より

前作でも、ジャンルとしての「ピアノ伴奏によるヴァイオリン協奏曲」をとりあげた島根。今回は、モーツァルトの第３番〜第５番を取り上げた。これらも、発表会などの機会を含めれば、オケ伴奏よりもピアノ伴奏で弾かれる機会が遥かに多いだろう。さらに、彼女には「ソロ・パートを研究した成果を発表するには、この方が直接伝わる」との意図も。収録にあたって、ピリオド奏法も研究したという。丁寧な演奏だけではなく、そこに臨む姿勢も学習者にとっては良い手本となるはず。碓井のピアノも前作同様、オーケストラのイメージを十分に汲み取り、好演を聴かせる。

寺西肇

音楽現代 2012年2月号 『音現新譜評』より

　推薦　島根恵(vn)と碓井俊樹(P)による、モーツァルトのヴァイオリン協奏曲３、４、５番である。教育者としても知られる島根恵だけに、ピアノ伴奏を選んだ背景には当然ヴァイオリンを学ぶ者への良き指針になればとの思いがあったことだろうが、この演奏はそんな事情をまったく考慮に入れなくとも立派な存在意義を持つ優れたものだ。レコーディングに際しピリオド奏法を研究したというだけあり、何よりケレン味のない率直なアプローチが心地良い。明るいタッチと明快なリズムで活き活きとした躍動感を生み出している碓井のピアノの功績も大きい。オーケストラ伴奏とは一味違い曲想がストレートに伝わってくるのもうれしい。広くお薦めしたいCDだ。

佐藤康則

ＣＤＪｏｕｒｎａｌ 2012年2月号 『ＣＤ新譜試聴記』より

モダン・ヴァイオリンに古楽の奏法を取り入れたアプローチによる、鮮やかでフレッシュなモーツァルト。音の出し方に細心の注意が必要とのことだが、肩から力の抜けた演奏はモーツァルトにぴったり。碓井の表情豊かなピアノが、オーケストラ伴奏でない不満を払拭してくれる。

堀江昭朗